喫茶店

私が何度か車でその喫茶店の前を通り、「いつか入ってみようかな?」と 思ったのは、「和風喫茶」の文字が目に入ったからでありますな。
「もしかしたら、お汁粉、ぜんざい、のたぐいがあるのではないか?」という甘党の私の興味をひいたのでありますな。
そして運命の日が訪れたのでありますな。
始まり始まり。

車から降りても、まず入り口が見当たりませんな。
どう見ても普通の家の玄関しかありませんな。
とりあえず玄関に近づいて、上を見ると、そこには「和風喫茶○○」なんて看板だけはあったりしますな。

がらりと、戸を開けると、、やっぱり普通の家の玄関なんですな。
玄関から伸びている廊下の先には2階にあがる階段があったりなんかしますな。
勝手に上がれる雰囲気はまるでないんでありますな。

「ごめんくださ〜い!」
「は〜い」
「あ、あの・・こ、ここは喫茶店ですか?」
「はい、そうです」
「ここから上がってよろしいんでしょうか?」
「ええ、どうぞ」

出てきた女性について部屋に入りますがどうみても普通の茶の間でございますな。
まわりをよく見渡しても、「ぜんざい○○円」とか別に書いてあるわけでもないんでございますな。

「どうぞ」

座布団なんぞを出されましても、面識のない人の家に突然尋ねてきた訪問者の ような気持ちになりますな。
お茶を出されてメニューを見せられても、なんか全然、落ち着きませんな。
「ぜんざい」どころか、品数がいくらもないんでありますな。

「コーヒーください」

厨房は台所のようでございますな。

「ごゆっくり」

コーヒーを出すとひっこんでしまいますな。
なんの事はない、まったく知らない家の茶の間で一人でコーヒーを飲んでるんですな。

だんだん、困ってしまいますな。
なにしろ知らない家なんですな。

友達の家で「すみませんね、あと30分で戻るのでちょっと待っててくださいね」と、面識のなかった母ちゃんにコーヒー出されて、ほっぽっとかれる 感じとかなり似てますな。
問題はいつまで待っても友達が帰ってくる訳がないということですな。

あんまり困ってしまうので、とうとう席を立ちますな。

「400円です」

と、お金を取られてしまうとこが友達の家じゃないと思わしてくれますな。

ま、こういう喫茶店ですな。
面白がって友達やら後輩やらを連れて何度も行ったリピーターはどうも私ひとりのようですな。

松島の近くですな。

是非行ってみたいという粋な方、残念ながら閉めちゃいましたな。

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