夏の縁側にて

独りになってから、もう何年になるんかいなあ・・

婆さんには我がままばっかり言って、ちーとも
楽もさせてやらんと苦労ばっかりかけちまったなあ・・

「お義父さん、麦茶をどうぞ」

「ああ、すまないねえ」

「ひまわりが奇麗ですねえ・・」

「なぜか、婆さんがやたらひまわりを増やしちまってなあ。あんたも世話が大変じゃろう、なんでまたこんなに増やしたんじゃろうなぁ?」

「あら、覚えていらっしゃらないんですか?」

「なにを?」

「お義父さんが戦地から帰ったときのことですよ」

そういえば、あれは確か戦争が終わって、家に帰ってくる途中じゃった
駅から家に来る途中、畑のひまわりがあんまり奇麗でつい1本折ってきたんじゃった・・・

「あんた〜!お帰り〜〜!」

「ただいま、戦地からじゃき、なんもないけんど、ほれ」

「あれまあ、ひまわり!そういえば家にはなかったわねえ」

「おみやげがわりだ」

「馬鹿ねえ、あんたが生きてればそれでいいのに」

あのころは二人とも若かったなあ・・周りは、がれきばっかりじゃったけんど、今思うと何だかみんな輝いてたなあ・・・

「お義母さんが私におっしゃったんですよ」

「なにをじゃい?」

「その時のひまわりの明るさが、お義父さんの命に見えたんですって」

「うん?」

「ひまわりが明るく、すくっと咲いている限り、お義父さんはずっと元気でいてくれるって・・そう思ったんですって」

「そんなことを考えとったかいなあ」

「お義母さん、亡くなるときに私に・・」

「なんじゃ?」

「ひまわりの世話をよろしくって・・・」

この歳には鮮やかな黄色がまぶしすぎるのお・・・

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